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「でんでんむしの かなしみ」

                                                        新美 南吉 作


 

           いっぴきの でんでんむしがありました。

           あるひ そのでんでんむしは たいへんなことに きがつきました。



           「わたしは いままで うっかりしていたけれど わたしのせなかの からのなかには

 

           かなしみが いっぱいつまっているのではないか」


 


     ・・・・・・・・・・・・

 



     でんでんむしは おともだちの でんでんむしのところに やっていきました。



     「わたしは もう いきていられません」

     と でんでんむしは おともだちに いいました。



      ・・・・・・・・・・・



     すると おともだちの でんでんむしは いいました。



     「あなたばかりでは ありません。 わたしのせなかにも かなしみは いっぱいです。」

 



     ・・・・・・・・・・・



 


      こうして おともだちを じゅんじゅんに たずねていきましたが どのおともだちも

 

      おなじことをいうのでありました。



      とうとう はじめのでんでんむしは きがつきました。

 

 



      「 かなしみは だれでも もっているのだ。 わたしばかりでは ないのだ。

 

       わたしは わたしのかなしみを こらえて いかなきゃならない 」



      そして このでんでんむしは もう なげくのを やめたのであります。